スピリット・オヴ・サマー
 言葉を断ち切る聖菜。微かな苦悩の影。
「そしたら?」
 もしかしたら聞かないほうがいいのかも知れない、と憲治は思ったが、好奇心のほうが勝っていた。憲治に促されて聖菜は言葉を絡ぐ。
「第2音楽室に連れていかれたんです。ドアは開けないように言われて、ドアの窓から中を見ました。見えたんです、先輩が…、」
 聖菜は声を詰まらせた。聖菜が見たであろう光景は、憲治にも容易に想像がついた。聖菜にしてみれば、かなり辛い光景だったに違いない。
 憲治は、問い掛けた自分を呪った。
< 364 / 422 >

この作品をシェア

pagetop