スピリット・オヴ・サマー
 聖菜の眼鏡の奥に、夢を語る者特有の、遠くを見るようなきらめきが生まれた。
「『憧子』は私に、大切なことを気づかせてくれました。そのことを、この夏を記録しておきたい。でも、こんな話、そのまま誰かに話してもただの『学校の怪談』にしかなりません。だったら、初めからフィクションとして残せばいい。そう思うんです。どうでしょう?」
 聖菜は憲治の顔を覗き込んだ。
「どうって、俺は雑誌の編集者でも、まして作家でもないんだし…、文章のセンスなんてこれっぽっちないんだから、俺は。」
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