スピリット・オヴ・サマー

　無意識ににじり寄る聖菜に押されて憲治は丸椅子の端に追いやられる。
「いえ、作品のことをどうこう言うんじゃありません、ただ…、」
　椅子の端の余白を気にしつつ憲治は問う。
「ただ、何？」
　憲治の様子に聖菜は、あ、すいません、と小さく言って、恥じらう仕種で一瞬黙した。それから、ふいっと顔を上げ憲治の目をまっすぐに見つめた。
「応援、してくれますか。私を。」
　真剣な聖菜の眼差しを直視しながら、憲治は、なんだそう言うことか、とため息を漏らす。