森林浴―或る弟の手記―
佐保里姉さんは毎日、何の言葉も発することなく、ただぼんやりとしていました。
私の屋敷には庭があり、そこには、佐保里姉さんの所望で沢山の木を植えていました。
佐保里姉さんはいつもそこで、ぼんやりとしていたのです。
森林浴をして暮らしたい。
若かりし頃、佐保里姉さんが夢見た暮らしでした。
幸乃も嫁いだ正世も、よく佐保里姉さんに話しかけていました。
ですが、佐保里姉さんがそれに返すことはありませんでした。
私は佐保里姉さんが不憫でありませんでした。
折角、美しく、本来なら聡明に生まれた佐保里姉さん。
それが香保里の手によって、こんなふうになってしまったのです。