森林浴―或る弟の手記―




その後、佐保里姉さんは嫁いでからのことを話してくれました。


嫁ぎ先はとてもいいところで、束の間の幸せを味わえたこと。


妊娠はとても嬉しかったこと。


そして、旦那様は徴兵され戦死したこと。


空襲で家と旦那様の両親が焼けたこと。


空襲から逃げるどさくさで、早苗と離れてしまったこと。


早苗の話をする時、佐保里姉さんは大粒の涙を溢しました。


まだ早苗は生きているのかもしれない。


私は密かにそう思いました。


ですが、何より佐保里姉さんが生きてくれていたことが嬉しかったのでした。


私は佐保里姉さんの手を握りました。


一緒に暮らすのが佐保里姉さんの為になる。


そう思ったのです。



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