アザレア
結婚している以上、浮気は法的にも責任が問われる。

それも新鋭として注目を浴びる社長と言う立場にあるなら、色恋沙汰はスキャンダルになりかねない。
火遊びは相手を見極めなければいけない、と言ったところか。


それが私の我が儘とは言え、社長と私は過去に交わりを持った。

その事実は未だ誰にも話していない。
口の固さは保障され、更にお金と言う鎖で縛れば私は社長の弱みにならない。


逆に言えば、弱みにさえなれない。
社長を想う私に、社長の家庭を壊す気なんてある筈もない。

喩え私以外の誰かから関係が漏れようと、旧友と言う過去を利用すれば情報操作など幾らでも出来る。


そこまで考えての事だった――…


最早、淡い望みは一片も残されていなかった。
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