失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
会社の近くだし…、誰かに見られても厄介だから普段行かないところへ、と思ったものの、思いつかず彼女に決めてもらった先はカフェ・バーみたいなところだった。
なるほど、ここなら俺の知り合いは来そうにないから安心だ。
「あのっ、この前はほんっとーにありがとうございました!」
席に着き飲み物を注文してからメニューを広げる俺に彼女はいきなり頭を下げた。
謝罪ではなく、お礼を口にした彼女。
なかなか良い子じゃん。
「もう良いよその事は。俺だっておいしい思いさせてもらったし」
「へっ?」
視線はメニューにいっているけれど、彼女の反応は丸わかり。
手に取るように彼女の驚きと焦りが伝わってきて笑いをこらえるのがキツい。
「ま、お互いさまってことで。あ、エリンギの串焼きとかうまそー」