愛が逃げた部屋


結婚なんてしてもしなくても良かったと岸谷真由美は白いベッドの上に沈みながらそう思った。


気怠い身体を引き摺るように起こし、覚束無い足取りでキッチンへと向かう。



夫·岸谷浩輔は出張でいない。真由美はため息をつきながらキッチンの水をコップに注いだ。



結婚は人生の墓場であると何処かの誰かはそう言った。確かにその通りである。


真由美は26歳。浩輔は32歳。もしかしたら浩輔よりも良い男に出会えたかもしれない。



結婚とはそれほどまでに良いものなのだろうか。



真由美は水を一気に飲み干しながら考える。



別に真由美は結婚したかったわけではない。ただ浩輔がしたい、と言ったからしたのだ。今思い返せばあの時浩輔は30歳。私と別れればもう結婚出来ないと思ったのだろう。





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