蜜色オフィス
「それに、結局、千明は私の申し出を断わっただろう」
「コネで入るなんて嫌だったんだよ」
「採用者名簿の中に千明の名前を見つけた時は驚いたよ。
でも、実力で入社してきてくれて嬉しかった」
そう言った後、社長は沖田さんをチラって見る。
そして、目を伏せて顔をしかめた。
「拓海の母親との結婚は、両親が勝手に決めたものだった。
だけど、生まれてきた拓海は何も悪くないし、幸せになって欲しかったんだ。
拓海の母親はその後再婚したが……、どうも拓海とは合わなかったようで、拓海の事を思うたび、自分の無責任さを痛感した」
膝の上で手を組んでいる社長が、その手にぐって力を入れたのが見ていても分かった。
「私のせいで普通の家庭環境を与えてやれなかった。
それを償いたくて、拓海の望むまま入社させて第一営業課にも入れたが、それでも満たしてやれなかった。……当然だな」