アイの在り方
RRRR…―
呼び出し音が鳴っている間、心臓が飛び出してしまうんじゃないかと思うぐらい緊張した。
「はい、川瀬ですが」
………何年かぶりに聞く母さんの声。言葉が出なかった。何から話せばいいんだろう。
「か…母さん…?」
一瞬、間が空いて驚いた声で名前を呼ばれた。
「亜衣?もしかして亜衣なの?」
懐かしい声に涙がボロボロと溢れてうんと一言だけ答えた。
母さんに話を聞いて欲しい。
帰って来なさいって叱ってもらいたい、それだけで電話をかけた。
「元気にしてるの?ご飯は食べてるの?」
「…ヒック…うん…」
「そう…そうだ!あのね亜衣」
思い出したように母さんの声が突然、弾んで次に出た言葉は…―
「由衣がね結婚したのよ?」
由衣とはあたしと3歳年の離れたお姉ちゃん。何をしても完璧で落ちこぼれのあたしと血が繋がっているとは思えないぐらいの優秀な姉。
「…そうなんだ、おめでとうって言っといて…」
「由衣の旦那さんていま流行りのIT企業の部長さんで裕福な生活させてもらってるのよ〜」