アイの在り方

また、突然だった。玄関を開けた途端に彼の蹴りがお腹を直撃して髪を引っ張らたまま引きずられる。

「やっ…痛い!やめて!やめてッ!」

「うっせぇ!」

頭皮が剥がれてしまうんじゃないかと思うぐらい掴む力は強くてほどけない。抵抗しようとしても無駄だった。


殴り蹴られ身体を丸めて内臓への攻撃を庇うしか出来ないあたしは、息をする暇もなく拳は振り下ろされた。

「………仕事行って来る」

気が済んだのか彼は痛みで唸るあたしなんか目もくれずそのまま出て行ってしまった。
口の中に広がる血の味であの人がくれた飴の甘さは消えた。

「うっ…うぅ…」

あたしは何度こんな痛みに耐えなきゃいけないのかな?
ハハハと小さく笑いながら起き上がろうとしても力が抜けて入らない。

もう、この人と一緒にいるのは無意味…―本当に殺されてしまう日が来るかも知れない。

あたしは、勇気を振り絞ってある番号へ電話をかけた。

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