薄紅空
それから村は大騒ぎとなった。




都のはずれにある、小さな村に皇太子が訪れたこともそれに起因していた。





しかし何より、一人の村娘が突如妃として宮に上がることとなったのだ。





村中の女衆が里長の屋敷に集められ、宴の準備に追われた。






その様子を、露はぼんやりとながめていた。




誰よりも実感が湧かないのは露であった。




「露。」




外を眺めていれば、里長に名を呼ばれ、部屋へ舞い戻る。




「何をしておる。宮様にお酌をしろ。」




「大丈夫だ。それより、露。駕籠を手配した。明朝には発とうと思う。」





「え・・・?」




月都の宮の言葉に、全員が眉を顰める。
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