薄紅空
「は・・・?」
露は、目を見開いて月都の宮を見上げる。
「私の妃(みめ)として、宮にのぼるがよい。」
皇太子にこのようなことを言われれば、露のような村娘に断る権限はない。
「どういうことでございましょう。」
「私は、そなたを見初めた。私の側にいるべき女子よ。」
淡々と言う月都の宮に、露は呆然と頷いた。
「露。そなたはまだ穢されていない。早く見つけることができ、よかった。」
この時の月都の宮の言葉は、露にはまだ理解出来ていなかった。
「月都の宮様の、お言葉のままに。」
ここにいても、自分のことは何一つ分からない。
ならば、世界を変えてみたい。
露は、そう願い、月都の宮について行った。