薄紅空
そして、用事が終われば、ぶらりと外に出て、森に向かう。
自分が捨てられていた場所。
覚えていたのは、露という名とあの歌だけ。
奈津には、返しきれないほどの恩を感じているし、本当の母親だと思っている。
しかし露は知りたかった。
己の生の意味を。
(まさか隣国の生まれではないでしょうけれど。)
この国は、ずっと昔から隣国との戦を続けている。
どちらが天下を取るのか・・・
押しては引いて、引いては押しての攻防を続けているようだが、ここ最近はこちらの国が優勢だと、里長から聞いていた。
ぶらぶらとしていれば、頬に冷たいしずくが落ちる。
「あ・・・」
雨が、降ってきた。