薄紅空


そして、用事が終われば、ぶらりと外に出て、森に向かう。



自分が捨てられていた場所。



覚えていたのは、露という名とあの歌だけ。



奈津には、返しきれないほどの恩を感じているし、本当の母親だと思っている。



しかし露は知りたかった。


己の生の意味を。


(まさか隣国の生まれではないでしょうけれど。)



この国は、ずっと昔から隣国との戦を続けている。


どちらが天下を取るのか・・・


押しては引いて、引いては押しての攻防を続けているようだが、ここ最近はこちらの国が優勢だと、里長から聞いていた。



ぶらぶらとしていれば、頬に冷たいしずくが落ちる。



「あ・・・」



雨が、降ってきた。


< 8 / 20 >

この作品をシェア

pagetop