薄紅空
村の方では、慌ただしく家屋に駆け込んだり、洗濯物をよせたりしている。
この国で、雨は忌むべきものとされている。
帝は、太陽神の子孫であって、それを隠してしまう、雨の天気はこの国で縁起の良いものではなかった。
しかし、露は雨が好きだった。
しんと静まりかえる、冷え冷えとした空気も好きだったし、何より、雨が降った後、陽の光を浴びて、きらきら輝く水の粒が美しいと思ったからだ。
「滅びを持つミコ
創りを持つミコ
世は滅びて、創りを迎える
二種の玉を持ちしミコに
世は委ねられ
空は薄紅に染まりしかな」
露は、澄んだ声で歌った。