不機嫌に最愛
───・・
「梓希先輩、まだかなー?」
時刻は、もうすぐ深夜0時ですけど。
まぁ、今日は遅いって言ってたからわかってるんだけど、……コレ、着ちゃってるから落ち着かない!!
真っ黒ファーの猫になりましたけど、……一応猫耳カチューシャもはめてます。
ベッドの上で、ぼんやりテレビを眺めながら枕を抱き締めると、ふぁーっとあくびが出てくる。
だって、日付かわっちゃうし、……梓希先輩いないし。
「もぅー、梓希先輩のバカ。」
萌楓ネコは、不機嫌になっちゃうよ?
日付がかわった今日はハロウィンで、……私が梓希先輩を我慢出来なくさせる予定、なんだよ。
……具体的に決めてないけれど。
キスのその先、だって、梓希先輩にならいいのに、とか思ってるのに!!
そこまで考えて、カァーと顔が熱くなる。
私は、梓希先輩のことばかりしか考えてないのに、一体どういうつもりなの?
キスしてくるし、夜は抱き締めて眠るくせに、決定的なことは言ってくれないし、……何もしないし。
……我慢、とかの問題じゃなく、私に興奮、とかしてくれないのかな?
───カチャリ。
玄関の方で鍵の開く音がして、
「……ただいま。萌楓、起きてんの?」
「お、おかえりなさいっ!!」
私を呼ぶ梓希先輩の声に、わたわたと慌て出す私。
だって、自信なくなっちゃったし、……今、ネコだし!!
どうしよう……!?
「……何してんの、」
「っ!!」
慌てた私は、結局、手近な毛布を頭から被ってくるまっている状態で。
部屋に上がってきた梓希先輩に、曖昧な笑みしか返せないでいる。
「萌楓?何してんの、本当。……可愛いけど、」
言いながらも、だんだん近付いてくる梓希先輩に、……ドキドキが止まらなくなる。
だって、もうネコだし、恥ずかしいし……
考えてる間に梓希先輩はもう目の前だし、
「もーか?」
優しい声に、なぜだか泣きそうになってくる。