不機嫌に最愛
間違いなく不機嫌で、……少しだけ泣きそうになってる私を見られたくなくて。
梓希先輩の首に絡めていた腕に力を込めて、梓希先輩を引き寄せた。
「も、か……?」
「私は梓希先輩が好きなの!!ずっとずっと、梓希先輩しか見えてないの!!今まで伝えてきたこと、……何回も梓希先輩を好きって言ったこと、伝わってないの?」
「……っ、」
私の今にも泣き出しそうな声で発した言葉に、梓希先輩の体が強張るのがわかって。
もう考えてることも伝えたいこともグチャグチャで、梓希先輩の首にしがみつくことしか出来ない。
「はぁー、ゴメン、萌楓。俺が悪かった。」
梓希先輩が長く息を吐き出して、ふんわりと包み込まれる感触がして、……覆い被さるように抱き締められていた。
「……勢いで、萌楓を抱くことも出来るけどさ?俺にだって心の準備が必要なんだよ。何年我慢したと思ってるんだよ、」
「我慢……って、梓希先輩が?」
梓希先輩の腕の中、素直な疑問を口にする私に、はぁーっとまたもや盛大な溜息を吐かれてしまった。
……そんなに溜息つかれても、わからないものはわからないんですよ!!
「こっちの話だから、萌楓は知らなくてもいーの。」
「えー、気になるんですけど?」
「いいから。とりあえず、萌楓さん?俺が28のオジサンに差し掛かってること、わかってる?」
抱き締めていた腕を緩めて、私の顔を覗き込みながら聞いてくる梓希先輩に、私はコクりと頷き返す。
まぁ、オジサンだと思ったことはないけれどね?
「じゃあ、もういいか。……仕掛けたのは、俺だし、」
