不機嫌に最愛
深いキス、なんて、したことないけれど。
梓希先輩の口腔内で、控えめに舌を動かしてみる。
……どうしたらいいか、わからないんですけど!!
「……っ、ふぁ!?ん、ぁ……っ、」
困りきった私の助け船(?)は、……やっぱり梓希先輩で。
私がしたくても出来なかった、深い深いキスを私にしてくる。
歯列をなぞり舌が絡まって、その甘さにクラクラして。
……もう、目の前の梓希先輩しか、見えない。
「っ、はぁ……、萌楓?大丈夫か?」
梓希先輩の下で、唇が離れてもクッタリしたままの私に、梓希先輩は困ったように笑う。
クッタリしていても梓希先輩の首に絡めた腕はすがるように離さないまま、梓希先輩は私の顔の両横で手を突いて見下ろしていて。
「大丈夫じゃないけど、……やめないで?」
「っ、煽るなって。……バカ萌楓。」
「んンっ、ぁ……、」
私の髪に手を差し入れながら撫でつつ、また重なる唇からは甘い声しか出させてくれない。
心なしか、梓希先輩も余裕が無さそうに見えるのが嬉しいし、……やっぱり大好きすぎてどうしようもない。
「ふぁ……、ん、ぁ……」
「萌楓、可愛すぎだって。」
深すぎるキスは、私の目を潤ませて、……もう思考さえも蕩けきっている感じ。
そんな私に追い打ちをかけるかのように、首筋に降りてきた梓希先輩の唇が吸い付いて、チクリと甘い甘い痛みが残る。
「……ぃ、たぃ。しきせんぱ、い……?」
首筋から離れた梓希先輩が至近距離で私を見下ろして、私の目尻に指先で触れて涙を飛ばす。
「どうする?今ならまだ、……やめられるけど?」
「っ、」
続き、……出来ることなら梓希先輩のモノになりたい。
けど……
「俺は、……萌楓が好きだよ。萌楓を俺のモノにしたい。」
「……梓希先輩、ズルくないですか?」
「え、」
「だって、今更……やめられるとか?なんで、私に決定権譲ってるの?」