『短編』恋するハーモニー
翌日。
七海は制服の上にコートを羽織って家を出た。
どんよりとした真っ黒な雲が空を覆い、今にも雪が降り出しそうだ。
「なんでこんな日に」
まだ昼下がりなのに薄暗い中を、七海は自転車に乗って高校に向かった。
昨日ほどの風はなかったが、自転車で風を切ると頬が冷えてちりちりとした。
自転車置き場に自転車を止め、音楽室へ続く階段をやる気なく上った。
ちらりと腕時計を見ると、午後1時55分だった。
「我ながら、優秀」
準備室の扉を開けると、廉が窓辺に立っていた。
くもった窓ガラス越しに空を仰ぎながら、呟くように歌を口ずさんでいた。