メルティングポット

「ただいま」

返ってくる「おかえり」の返事はない。

ママはどうせまた横山と出かけているんだろう。

2LDKのマンションにあるわたしの家は真っ暗だ。
リビングの電気をつけると、明るくなったテーブルの上にどうせいつもの内容の書き置き。

「横山さんと出かけてくるからごはんは勝手に食べててね」

予想しているからわたしはさっさと自分の部屋に入って、帰りに買ったマックの袋を開ける。
友達と食べるとおいしいのに、家で食べるマックはなんだか湿っぽい気がする…。


ママはわたしが小さいころ離婚した。
そんなママが去年の暮れ、わたしにある男を紹介した。

「よ、横山です」

三十四歳という割にはちょっと髪の毛が後退している感じのする冴えない男。
緊張するとなぜか水ばかり飲む癖も、興奮すると「知りまへんがな!」と方言を丸出しにするのも嫌いだ。

そう言うとママは決まってわたしに言う。

「わたしだって母である前に女なのよ!」

ママの経営しているスナックに来る常連客らしい横山って男とママ。
あんな冴えない男のどこがママは好きなんだろう?

持ち帰ったマックを食べ終わり、パソコンの電源を入れっぱなしだったことに気がつく。

何気なく検索エンジンで検索してみる。

「melting pot」

出てくる答えはいつも同じ。

「人種のるつぼ」

メルティングポット。

わたしはこの言葉が嫌いだ。
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