【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
――怖い。
この人は、怖いから、嫌だ。
エレベーターの中で、握手をしたときに走った嫌悪感が、リアルに脳裏をよぎり、優花の手は、小刻みに震えた。
「どうして……?」
今ここに、この場所に、この人が居るのだろう。
優花も、イレギュラーの通報をしたのが、この人物だと聞かされている。
そもそも、通報義務があるのだから、それ自体は不思議ではない。
だが、研究所の幹部しか知らない避難シェルターのある地底深くに、それも、見るからに怪しげなカッコウをして、
まるで、優花を待ち伏せてでもいたかのように現れる、
この状況が、怪しすぎる。
「それはね。あなたを、あのセキュリティ万全の研究所から、炙り出すためなの」
「え……?」
『炙り出す』
不穏な響きを持ったそのフレーズに、優花は、びくりと、肩を震わせる。