【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「ヒョウタンから駒、というか、棚からぼた餅ね。本当は、ケルベロスの件で潜入していたんだけれど、まさか、あなたに会えるとはね――如月優花のイレギュラーさん」
――ケルベロス?
「あなた、誰……なの?」
「私は、黒田マリア――では、ないんだけどね」
クスクスと、女は楽しげに笑う。
「記憶と顔をいただいたから、用済みの本物の黒田マリアは、今はもう、冷たい土の中」
その笑いの中に垣間見える狂気。
それを感じ取った優花は、我知らず、尻餅をついたまま後ずさる。
この人は、人の命を奪うことを、なんとも思っていない。
優花の身体を、戦慄が走り抜ける。
――晃ちゃん、
晃ちゃんっ、
晃ちゃん、助けてっ!
心で、必死に叫ぶも、返事は来ない。
「無駄よ。特別な結界を張ってあるから、いくらあのグリフォンでも、ここには入ってこられないわ」
「グリ……?」
恐怖に支配された今の優花には、女の言っていることは半分も理解できない。
「まあ、いいわ。本題に入りましょうか」