【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
視界が、グニャリと歪んだ。
悲しいのか、切ないのか、やるせないのか、怖いのか。
ごちゃ混ぜになって喉の奥から込み上げてきた熱いものが、堰を切って溢れだそうとしたその時、
「アホか。んなことがあるかよ」
背後から飛んできたやたらと明るい声に、心臓を鷲掴みにされて、文字通りビクっと飛び上がった。
恐る恐る振り返ると、目に飛び込んできたのは、夕日を浴びて一層明るく感じる金色の髪。
「晃ちゃ……」
名を呼ぼうとして、
不覚にも、ポロリと涙が一筋、頬を伝い落ちた。
ゆっくりと歩み寄ってきた晃一郎は、「何泣いてんだよ?」と、両手の親指の腹で、涙に濡れた頬を拭ってくれる。
その穏やかな表情と温もりが心にしみて、再び涙があふれ出す。