彼と彼女と彼の事情
正直なところ、郁人に会うのは、気が引けた。 



郁人の気持ちを知ってしまった以上、なんとなく、彼の気持ちを弄ぶようで…… 


心苦しかった。



だから、なんとなく、会いにくくて……



自分から連絡することは、控えていたのだけれど。



それでも――



郁人の、いつもと変わらない優しい声を耳にすると、そんな不安も吹き飛ぶようだった。



戸惑いを感じつつ、郁人に会えるという喜びから、気持ちは急くばかりだった――…。




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