ワイルドで行こう
「だめ……ここじゃ」
 静かで暗い河原道。どんなに交通量が少なくても、時々通る車に変な風に思われるのは……。違う。彼に触れられたら、自分でも堪えきれなくなってしまうからが正しいと琴子は思い改める。
「昨夜、眠れていないだろ」
 優しくゆっくり乳房を愛撫されながら、琴子はこっくりと頷いた。
「俺も。日中もハイだった」
「私も」
 被さる彼が、あの目尻のしわを優しく滲ませる笑みを見せてくれる。
「今夜もそうしたいけど。琴子の目、すごく疲れているな。今夜はぐっすり眠ろう」
「うん……、そうする」
 今度は琴子から彼の黒髪を撫でた。それだけで、彼がとても狂おしい顔とするから、琴子も切なくなってしまう。
 今宵も互いに寄せた唇が深く交わった。
 琴子の唇を吸いながら、英児が囁く。
「俺の店、俺の自宅でもあるんだ。だから、今度、俺の部屋で……じっくりゆっくり……」
 そうだったんだと『店に来い』と誘ってくれた訳をやっと知る。
 それでも英児の手が、どこまでも琴子の肌を惜しそうにして離してくれず。
 琴子もそのまま流されてしまいそうなほど彼の背中にしがみついてしまい、素直に帰るには少し時間がかかってしまった。
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