ワイルドで行こう

「いいよ。龍星轟の仕事ではなくて、俺の彼女として気楽に磨いてくれて。琴子がゼットを磨いているところも、タイヤにワックスをスプレーして艶出しをしてくれているところも事務所から見ていた」
「うん。楽しそうで触るのが嬉しそうで、下手っぴだけど大事にしてくれている可愛いにこにこ笑顔だったよな~。俺の女だったら、嬉しいわ」
 矢野さんまで! そんな顔しながら車を磨いていたところ、事務所から英児にもじっと見られていたらしい……! そう思うと、かああっと頬が熱くなるほど琴子は照れてしまった。
 しかも英児まで。しっかり見つめていたことを知られ照れて照れて琴子を見てくれず、帽子のつばでまた顔を隠してしまう始末。
 それを見て、矢野さんが豪快に笑った。
「俺、監督だけするからよ。琴子、自分でやりな」
 名前で呼ばれた。
「では、専務頼んだよ」
「おう、任せておけや。タキ」
 どうやら、英児を店長と見ている時は『タキ』。弟子か息子のように見ている時は『英児』と呼んでいるようだった。
「ほれ、姉ちゃん。もう夕方になるぞ、早くしろ」
 姉ちゃんに逆戻り? 琴子は顔をしかめつつも、でももう笑ってホースを手にしていた。


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