ワイルドで行こう
空を見上げると、ますます沢山の蛍が飛んでいた。
「懐かしいわね。暗がりの蛍、水が流れる音、そして蛙の大合唱」
母の機嫌の良い声が聞こえてくる。
「ここかなり田舎の農耕地帯ですからね。人が少ない場所だけれど、昔ながらの良い物持っている土地ですよ」
母はベンチに座っているが、彼は母の側の地面に跪き、そっと母を見上げて話し相手になってくれている。
「本当ね。まさかこんな良いものをまた見られるとは思わなかった」
「お母さん、この市街のご出身ですか」
「いいえ。峠を越えた東にある町で……」
「ああ、桜とか柿が有名ですよね。俺、そちらへも、よく走りに行きますよ」
「ほんとう、あの車はどこまでも走っていきそうね」
「あちこちの、こうした景色を見るのが好きなんですよ」
『いいわね』。母の笑い声。
何故か。琴子の目頭が熱くなる。涙が溢れていた。そんなつもりなかったのに。
どうして自分はあんなにしてやれなかったのか――。そんな情けなさもあって。でも、母が笑ってくれている。父が側にいた時のように。琴子が知っている優しくて暖かくてドンとおおらかだった母そのものを思い出させる。
でも思う。家族だからこそ、駄目なことがあったのかもしれない。家族だからこそ……。
それを今、知った気がした。『外の空気』というのは、このようなことなのかもしれないと。
『待っていてくださいね』
ひとまず母を安心させてくれた彼が、今度は琴子のところにやってきた。慌てて涙を拭ったのだが、間に合わず気づかれてしまう。
「懐かしいわね。暗がりの蛍、水が流れる音、そして蛙の大合唱」
母の機嫌の良い声が聞こえてくる。
「ここかなり田舎の農耕地帯ですからね。人が少ない場所だけれど、昔ながらの良い物持っている土地ですよ」
母はベンチに座っているが、彼は母の側の地面に跪き、そっと母を見上げて話し相手になってくれている。
「本当ね。まさかこんな良いものをまた見られるとは思わなかった」
「お母さん、この市街のご出身ですか」
「いいえ。峠を越えた東にある町で……」
「ああ、桜とか柿が有名ですよね。俺、そちらへも、よく走りに行きますよ」
「ほんとう、あの車はどこまでも走っていきそうね」
「あちこちの、こうした景色を見るのが好きなんですよ」
『いいわね』。母の笑い声。
何故か。琴子の目頭が熱くなる。涙が溢れていた。そんなつもりなかったのに。
どうして自分はあんなにしてやれなかったのか――。そんな情けなさもあって。でも、母が笑ってくれている。父が側にいた時のように。琴子が知っている優しくて暖かくてドンとおおらかだった母そのものを思い出させる。
でも思う。家族だからこそ、駄目なことがあったのかもしれない。家族だからこそ……。
それを今、知った気がした。『外の空気』というのは、このようなことなのかもしれないと。
『待っていてくださいね』
ひとまず母を安心させてくれた彼が、今度は琴子のところにやってきた。慌てて涙を拭ったのだが、間に合わず気づかれてしまう。