ワイルドで行こう
「っていうかよお。お前ら『自分だけの車』っつーものを、自分で探さんかいっ。まずはそれからだ」
だがそこで、三人の子供達が揃って社長デスクにいる親父に向かってきた。
「だって、私達、子供の時からずっと、」
「親父がチューンした車じゃないとさ、乗り心地合わないっていうか、」
「いつか絶対、父ちゃんが大事にしている車は全部乗ってやろうって思っているんだもんな!」
じゃなきゃ、龍星轟の子供じゃない!
思わず、今度こそ、英児は陥落しそうになった……のだが。
『だから父ちゃん、今夜だけでもいいから、私、レビンに乗りたい』。『やめろー、俺が免許を取ってから決めてくれ!』。『父ちゃんは乗せるのはいいけど、運転されるのはすげえー嫌なんだ。母ちゃんだけなんだろ。どーなんだよ!!』。
三人揃っての大砲。これが束になってかかってくると結構な威力があり、親父英児も吹き飛ばされそうになることがある。そんな時、対峙する父親は……。
「もうお前ら、うるさい!」
これを言えば、子供達がピタリと口を閉ざす。別に親父が怖いわけでも、怒声に震え上がったわけでもない。
子供三人の目線が、こんな時、静かな母親に向かう。そしてそれは、旦那の英児までもが。
「うるさいのは、幸せな証拠」
母ちゃんの、にっこり柔らかい微笑み。そして優しい声の『締め』。これが我が家の恒例で、そして、そう……母ちゃんが言うとおり。『うるさいのが幸せ』ということを子供達は幼い時からずっと聞かされてきたから、そこで納得して終わる。
「もう、いい。今日は自分の車に乗っていく」
娘が諦めてくれた。姉貴に先に奪われず、長男もホッとした顔。そして次男はもういまの言い合いなど忘れて、父親のデスクにある新刊の自動車雑誌をくすねて持っていってしまう。
これにて、お開き。母ちゃんの『にっこり、幸せ』が出たら、いつも解散になる。