ワイルドで行こう

「親父は?」
「ああ、琴子さんが来るからって。菜園の野菜をつんでいるよ。もう朝からうるさくてねえ。琴子さんが来るから、来るからって」
 それを聞いては英児も知らんぷりは余計にできないと覚悟したようだった。
「父ちゃんのところに行ってくる。畑、だよな」
「そう、だけど……」
 途端に、愛子姉さんも不安そうな顔。でも琴子からそれとなくにっこりと返してみる。
「じゃあ、琴子さんを連れて挨拶しておいで。それで、もう家に入るように言ってくれる? 熱中症になると注意するのに聞かないのよ、ずうっと畑仕事をしてきた俺がなるわけないって、もう」
「わかった。行ってくる」
 英児と一緒にそのまま玄関先から、本宅の裏へと回る。
 裏庭的な、でもわりと広い畑に出た。爽やかな夏風が吹き込んできて、遠くには海が見えた。
「いたいた」
 英児が指さしたのは葱坊主のなかで、麦わら帽子だけがひょこひょこ動いているところ。
 そのまま英児の後をついて、琴子も麦わら帽子に近づいていく。
「親父。ただいま」
 その声に気が付いた麦わら帽子が止まった。そして葱坊主の中から、老人が現れる。
「おう、きたんか」
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