ワイルドで行こう
初めての滝田家でのお盆を迎える日。
「いらっしゃい、琴子さん。英ちゃん……って、英ちゃん??」
滝田家の玄関を訪ねた琴子と英児をみた愛子がびっくりしている。
「どーしたの英ちゃん。そんなに短髪になっちゃって。まあ、夏だしねえ。あの仕事、外の時は暑いだろうしねえ」
「そうなんだ。ちょっとな短くしてみただけ」
そういって英児が撫でる短く刈り込んだ頭は、もう黒色。
琴子と英児はそっと顔を見合わせて微笑みあう。
「せっかく来たんだから、ご飯でも食べていきなよ。いつもお仏壇のお参りだけして、英ちゃんさっさと帰っちゃうんだから。今年は琴子さんもいるから、お父さんにゆっくり会わせてあげてよ」
「うん、まあ……。うん、わかった」
英児の歯切れ悪い返答。愛子からも、矢野さんからも琴子は聞かされていた。実家に亡き母親のお参りだけはかかさず行くけれど、お茶の一杯だけ飲んでそれだけで帰っていく。だから余計に英児の父親が憤慨して怒る。でも今年はお嫁さんになった琴子にも挨拶が必要だから、英児もさっさと帰るはずはない。そこは琴子さんも、よく見ておいてあげて、あげてくれよ――と、彼を見守ってきた大人達から聞かされている。
話し合ったわけでもなく、琴子は英児のしたいようにさせてみようと見守ることにした。でも、今年は愛子さんが準備した食事をいただく気持ちになったようだった。