ワイルドで行こう
英児が懸命に囁く――。
あるんだよ。その女の匂いってやつが。お前の優しくて柔らかくて、清々しくって。必死で一生懸命で、健気。じゃないとあの匂い出せないからな。見なくてもお前の姿がどんなか、どんな可愛い女かすぐにわかったよ。
そんな匂いの女はすぐに脱がしたくなるんだよ。だってそうだろ。素肌にしないと身体から出てくる匂い嗅げないだろ。
だから。お前には悪いけど。もう会う度に、夜、お前を勝手に脱がして裸にして、愛しまくっていたよ。
「だから俺、今、すっげー興奮している。琴子の匂い、今日の匂いは特にすごい」
「わ、わかる……」
熱くかすむ目をなんとか開けて、琴子も英児を見つめて言う。
わかる。私も貴方の匂いにすごく惹かれる。その匂いを嗅ぐと、まるで……動物みたいな気分になるの。
私、男の人の身体の匂い。こんなに好きになったことない。初めてなの、初めて……。
俺達、もしかして。
――牡と雌、それで引き寄せられたもの同士? 匂いを嗅ぎあい分け合って、そして混ぜ合わしている今。匂いを認めた同志。
きっと、そうよ。貴方じゃないともう駄目ね。
俺もな。もう俺の匂いだからな。これ。