牛乳と猫スーツ。
遥はそのまま化粧台の前に座り、髪をシュシュで束ねて化粧を始める。
時間をかけて化粧を終えた遥は、寝る前に選んだ黒のワンピースを着る。
ブランド物のバッグにケータイや財布などを入れていって、玄関に向かう。黒い革のニーハイブーツをはいて、部屋を出た。
「フフ〜ン♪」
鼻歌を歌いながら、軽くスキップする。こんなに足取りが軽く感じたのは初めてだった。
「あれ〜…?はるっち?」
突然出てきたのは彩華だった。まだ起きたばかりのようで、目は半開きでフラフラしている。
「(しまった!?彩華に見つかった!)」
ライバルである彩華と出会して、遥は驚く。
「そうそう、今日は外に―――」
「ちょわぁ〜!!」
彩華の話も聞かずに、遥は飛びかかって手刀を打ち込む。
「がべっ!?」
彩華は気絶してバタリと倒れた。
「今日は…今日だけは、誰にも邪魔させないわ!」
そう言って、遥は全速力で寮を出た。
【校門】
そこにはすでに直樹がいた。貸し出し自由の自転車のスタンドを立てて止め、サドルに座りながら待っていた。
「デートか…。今思えば初めてだな。」
白のシャツにジーンズ姿の直樹がケータイで時間を確かめながら呟いた。
「直樹〜!」
遥が駆け足でやってきた。