牛乳と猫スーツ。
直樹は前に蓮に聞いたことがあった。エリーゼは極限までお腹が減ると、見境なく口に物を入れるらしい。
蓮も髪を食べられた(正確には口に含んでいるだけ)らしいが、料理を作ってあげると落ち着いたそうだ。
しかし食料なんて持っていない。
「とりあえず、彩華さんを助けないと。」
エリーゼは立つ気力も無くなったようで、仰向けになり廊下に寝転びながらも、彩華のポニーテールを、もしゃもしゃと口に入れていく。
彩華はこちらを向きながら助けを求めて手をバタつかせ、ポニーテールがエリーゼに食べられているので、時間と共に徐々に仰け反っている。
「助げでぇ〜。直樹ぐぅ〜ん!」
既に半泣きの彩華の体を引っ張る。
「ぐぺぇ…。」
奇怪な声を出して、エリーゼが彩華の髪を吐き出す。
しかし、あまりに簡単に離したので、勢い余ってポニーテールが勢い良く直樹に向かって飛んでくる。涎で重くなっているので余計に勢いがいいのだろう。
それはあまりに突然だったので回避不可能だった。
ベチャッ!
想像通りの音、痛み、生暖かさ、予想外れの無味無臭。エリーゼが食べていない髪からはシャンプーの甘いにおいがした。
「あ、ごめん!直樹くん。ポニーブレードしちゃって…。」
「いいよ、これはしょうがないから…。」