牛乳と猫スーツ。
「この組み合わせ、直樹くんは嫌いかな?」
「好きとか嫌いじゃなくて!いくら女子寮でも、その姿は控えてくださいよ!しかも部屋のドアが開いてるし…。」
「いやなに、君の姿が見えたからな、開けておいた。」
「え?まさか俺が覗こうとするのを分かってて、ワザと?」
菫はクスッと笑ってウィンクする。
「よし、できた。」
「そういえば、何を作ってたんですか?鼻歌を歌ってたし、何か良いことでも?」
「御萩(おはぎ)だよ。私はこれしか作れないんだけど、昔から蓮が美味しいと言ってくれるんだ。作っていると、無邪気に笑いながら食べる蓮の顔が浮かんできてね、ついつい鼻歌を歌ってしまうんだよ。」
いつものと違う、素の笑顔で菫が話す。
「幼馴染みなんですよね、家が隣同士って聞きましたけど。」
「ああ。初めて出会ったのは幼稚園の時だよ。家の庭で1人で遊んでいたら、塀を乗り越えてきた蓮が上から落ちてきたんだ。」
「今と変わらず、会長ってすごい行動力ですね…。」
「そうだろう?今となっては慣れたが、初めは戸惑ったよ。親同士が友人だった麗花と、家が隣の蓮、3人でよく遊んだものだ。たまに彩華や優華も一緒にね。さて、昔話はこれくらいにして、1つどうだい?」
皿に乗せた御萩を指差す。
「もらいます。って、その前に縄を解いてください…。」
「安心しろ、お姉さんが食べさせてあげるよ。」