牛乳と猫スーツ。
「あ、知佳さん!チョコレートのインパクトがある渡し方知らないかな?」
「インパクト?そうだな…。あ!いいのがあるよ!」
………………………。
……………。
……。
2月14日、バレンタインデー当日である。
そして、そんなざわつく学園の中で、全速力で走る者がいた。
「なぜだ!?なぜこんなことに〜!!」
阿部直樹である。壁に手をついて大きく呼吸する。
「見〜つけた。」
後ろから銀色のポニーテールを揺らしながら歩いてくる悪魔がいた。
「ヒィィィ!?」
それは少し前にさかのぼる。
…………………。
…………。
……。
朝、直樹は普通に登校して、自分のクラスへ向かっていた。歩いている途中、他のクラスではチョコレートを渡す女の子が見えた。
「そういえば、今日はバレンタインだっけ?忘れてた。」
あまり興味なさそうに直樹が呟く。
「おは〜。」
挨拶しながら自分のクラスのドアを開けて入る。
「あ、直樹さん、おはようございます。これどうぞ。」
優華がリボンのついた小さな箱を直樹に渡す。
「ありがとう、優華さん。」
優華から箱を受け取り、自分の席に座る。
「おはよう。今いいかな?直樹くん。」
「おはよう。大丈夫だよ、どうしたの彩華さん?」