Loving Expression ~愛を詩にのせて送ろう~
彼女の平手打ちもよくきいた。
今まで男にしか殴られたことのない頬に彼女は新しい傷を生やしたのだ。
痛かった。
心身ともに深いナイフで斬り付けられたようだった。
よくドラマで妻からビンタを食らう情けない夫を見るが、こんな気持ちだったのだろう。
見損なわれたか、と夏目は感じていた。
もう人を傷つけるのはやめる、と誓ったのにそれをたやすく破った自分を見損なわないはずがない。
しかも大好きな男を殴られて軽蔑しないはずがない。
「なんでなんだよ………」
人が横をすり抜けていく中、ポツリと夏目は呟いた。
突然立ち止まった彼を迷惑そうに見て、同学ぐらいの男子が舌を鳴らした。