ちび×ひめ Ⅰ
「何って・・・・・・」
はぁはぁと息を切らしながら、少しずつ呼吸を整える透は、どこか急いでいるような焦ってるような感じだった。
「・・・・・・」
無言で辺りをきょろきょろと見回した透に海たちは不思議そうな顔をし、疑問符を浮かべる。
「・・・・・・? ねえ、何か探し物してるの?」
海の問いに透は、立ち上がり、何もなかったかのような顔をし、綺麗で小鳥がさえずる様な可愛らしい声で、穏やかな笑み浮かべたが、
海にはその笑顔がウソ臭いような感じがした。
「・・・・・・ううん。何でもないよ」
「何でもないって・・・・・・本当に?」
「うん」
笑顔で答える透に、茉耶は、
「泥だらけだけど、大丈夫?」
「うん・・・・・・。それより、この近くに神社はないかなぁ?」
神社? またどうしてそんなところ・・・・・・を。
「?」
「その藪森の中を抜けたところに、確かあった気が・・・・・・」
海が言い終わる前に透は、「ありがとう! またね」と笑顔で言い、藪森の中に向けて走り出した。
「ちょっ、ちょっと千堂院さん?」
引きとめる声の間もなく、海たちは小さくなっていく透の姿を見つめたまま残された。
残された二人は互いに見つめ合い、少し無言のままでいる。
「・・・・・・」
先に沈黙を破ったのは海だった。
「何だったのかしら・・・・・・。それよりも何急いでるのかしらね?」
透が走り去り見えなくなった時、突然、強風が二人を襲ってきた。
台風のようにとても強く物が飛ばされそうなほどだ。
風になびく髪とっさに抑えた二人は、目をつぶりながらも、飛ばされないように力強く足を踏ん張る。
風は何かを通り過ぎたように、急にやんだ。
まるで私たちの元へ向かって来たかのように――いや、何かを追いかけているかのように――。