わかれあげまん
柚をそこに置いたまま、美也子は渡良瀬の袖を引っぱって学食の隅に連れて行った。
そして。
「……まさかって思うけど聞いていいですか?」
「ん?何を?」
「柚から全部聞きました。昨夜のこと」
渡良瀬はぎょっと目を見開いてから、アッハッハと豪快に笑って後頭部に手をやった。
「いや~、そっか~聞いちゃったのか。まあ美也子ちゃんは柚の親友だもんな」
「甘い言葉攻めにして柚の事誘い出して、お酒が弱いあの子にしこたま飲ませて、下宿に連れ帰ってヤッたのも、全部自分の進学のためだったんですか?」
歯に衣着せぬ美也子に、渡良瀬はたじろぎつつもニコリと爽やかに笑って言った。
「そうストレートに言われるとちょっと心苦しいけど……まあ、そういうことかな?」
ばしーん。
と、瞬間美也子の平手が、渡良瀬の頬をヒットした。
刹那だけ静まり返る学食。
続いてそっちを見やりながら面白そうにヒソヒソと囁きあう学生たち。
「ってえ!何す」
「……クズ!」
美也子は怒りに真っ赤に上気させた顔で渡良瀬を睨みあげ叫んでから、踵を返した。