わかれあげまん
「何だよ。慌てて飛び出して。」
今振り返ったら顔の赤いのがバレちゃうよね、と柚は背を向け身体を固くしたまま駄々っ子のように首を振り、
「・・・べ、べつに!フツーに帰るだけだし。」
「じゃ乗ってけばいいだろ。」
柚の気も知らずのんびりそう言う哉汰の無神経さに内心ちょっとイラつきつつも、柚は。
「だって藤宮くん、このあと受験コースの授業が…」
「今日はない。…俺もこれで上がり。」
恐る恐る振り返ると、自分の腕を掴んだまま見下ろしている綺麗な顔にズクッと心臓が疼き、ああ、やっぱ見るんじゃなかった、と柚は更に温度を上げる顔をゲンナリ俯かせた。
「…い、いいよ。あたしは電車で帰るから。」
「不自然だろ。俺車だし、あんたと同じ大学方面に帰るのにさ。」
「フ、不自然じゃないよ!」
ムムッと口をへの字に結び、柚はもはや取り繕うのを諦め紅潮した顔できっと哉汰を見上げた。
「なんで。どう考えたって、…」
キッとさせた顔に更に皺を刻んで、柚は叫んだ。
「だって!藤宮くん彼女居るんでしょ!?」
「…!」