わかれあげまん
驚いたように見下ろす哉汰の流麗な眉がピンと跳ね上がった。
「…は?」
「彼女に悪いから。…乗らないよ。あたし。」
「……」
「手、離して?」
「………」
怪訝に柚の神妙顔を数秒見たあと、プッと軽く吹き出した哉汰は。
「そんなこと。あいつは気にしないよ。」
「…っ!あ、あたしは気にするの!…いやなの!」
「俺がいいって言ってんだからいいの。ホラ」
「いっ!」
くんと乱暴に引っぱられよろめいた柚の華奢な身体は、ストンと哉汰の胸に当たり、右の腕に収まってしまった。
「ひぁ!?」
ますます悪くなる事態にひきつるような小さい悲鳴を上げたきりフリーズ
してしまったのをいい事に、哉汰はそのまま半ば抱きかかえるようにして柚を駐車場へと連れて行った。