わかれあげまん
混乱しつつそれでも柚は渡良瀬を睨みあげ、更に抗おうとしたけれど。
「柚…聞いて。…ちゃんと聞いて。俺の話。」
刹那浮かんだ、迷子の子供のように頼りなげに、切なげにゆがめられた渡良瀬のあの表情に思わず息を飲む柚。
渡良瀬は指を柚の濡れた髪に伸ばし、優しく戯れながら続けた。
「あの晩のことは本当に悪かったと思ってる。…でも…切欠は確かにいただけないものだったとしてもさ。」
「…」
「俺、柚を抱いて分かったんだよ…。運命感じたっていうかさ。」
渡良瀬から出た“運命”という単語に、柚の体がピクリと跳ねた。
「えっ。」
その反応を持ち前の強かさで敏感に察知した渡良瀬は、とどめを刺すように更に耳朶に唇を付け、続けた。
「…カラダから始まったってさ。…惚れた事には違いないんだぜ?」
「…せん、ぱい」
ほんとに?
柚が懸命に渡良瀬の瞳の奥を読み取ろうと見つめると。
フ。とまたその甘いマスクを緩め、困ったように笑んだ渡良瀬は。