わかれあげまん
あ・・・あ。
サイテーだ。…
サイテーだ、あたし…
油断した悔しさと、自分の甘さに対する激しい憤怒と、ただただ溢れだす悲しさに柚は唇を噛んだまま小さく嗚咽した。
「泣くなってー。…こういうの、好きだろ?」
なす術なく組み伏せられたまま浴びせられるサディスティックな言葉に、惨めな気持ちが加速する。
「だから、…諦めて、…俺のものになりな?…俺だけの、柚ちゃんにさ。…」
「…ひ…先輩…ばかぁ…っ!」
不敵に、妖艶に笑んだその顔で。
「強がるなよ。…ホラ…言って。柚は、誰のもの?」
「…」
「…誰のもの?」
「せん・・・ぱ、い…」
「そ。…いい子だ。」
嘆かわしいことに。
過去に一度柚を抱いている渡良瀬は、彼女の“いい場所”を知り尽くしていた。
繰り返される、蕩かすような甘い所作と、まやかしの愛の言葉。
それはまるで忌まわしい呪文のように、柚から抗う気力を奪っていき、そしていつしか。
諦めのまま、柚はとうとう心のセンサーをを完全にシャットダウンして。
流されるまま、偽りのレンアイ、その奈落へと堕ちて行った。