わかれあげまん
酒の回りもいい具合なのか、響き渡るようにイタリア独特の強いイントネーションで語り合っているその集団の中ほどに座っている、長髪イタリアン美女を。
美也子はじっと、フードの陰から盗むように窺った。
彼女はとりわけ隣に座っているマッチョなスキンヘッドの男性選手に甘えるようにしなだれかかりながら、嬉しそうに彼の耳に何かを囁いている。
「げっ。何アレ」
美也子は胡散臭そうに眉を顰め、呻いた。
「…美也子、あの娘知ってるの?」
小声で尋ねる啓祐に、こくっと頷いて、美也子はカクテルを一口あおった。
「うちの大学の交換留学生。」
「ほんとに?へえ、彼女芸術系だったのか~。」
意外そうに、けれど穏やかに言う啓祐。
「ね、啓祐。あの娘、よくここ来るの?」