わかれあげまん




「申し訳ないと思ってんならさ。」


「…?」


少し間を空けてから、やがて低く滑らかな声で柚に向け放たれた台詞は。


「今晩、俺に付き合ってくれる?」


「……へ・・・?」


驚愕に、俯いた顔を上げ正面を見るけれど、やはり哉汰の姿は闇に紛れ見えなかった。


その塗りつぶされた黒い静かな空間の中、柚の鼓動だけが少しせわしく動いていた。



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