わかれあげまん



「……」


沈黙した哉汰の鋭くも優麗な眼差しが、ゆっくりと柚の首から下に滑り降りて行って、その辺りでひたと止まり。


「・・・どうしたんだよ、それ。」

潜めるような低い声。


「…へ?」


「尋常じゃない数…」


「へ?…数?」


何言ってんだろ、藤宮くん。

てか、どこ見て……




柚は最初こそ訝しく哉汰を見上げていたが。


「……!!」


やがて、ジワジワとその記憶が脳内に這い上がってきた。

今より少し前の刻。


体育館の更衣室のベンチソファの上で。

渡良瀬が首辺りに何度も這わせ、蹂躙するように刻み付けられた唇の感触までもが。


それがありありと肌の上に甦り、柚は愕然と哉汰を見た。


衝撃と当惑とがない交ぜの、彼の視線はまだそこに置かれていて。


「み、見ないでっ!!」


するどく叫び、弾かれるように彼に背を向けた。



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