わかれあげまん
哉汰はゆっくりと、咀嚼の動きを止めた。
少し驚いたように見開いた焦げ茶の瞳が、揺れていた。
「・・・・・・。」
ことりとおもむろにテーブルに箸を置いた哉汰が、ゆっくりと右手を柚の顔に伸ばしてきた。
な、なに!?
あたしやっぱ、藤宮くんの触れてはいけない部分に、踏み込んじゃった!?
身構えた柚の心臓がにわかに激しく脈打った。
伸ばされた指先が、ぽかんと開いた唇の端に触れ。
え・・・
触れられて、ビクッと肩を竦めた柚だったが。
「ごはん粒着いてる。」
すぐに戻した指先をぱくりと口に放り込み、それからその見目良い唇に弧を描く哉汰。
色っぽいその一通りのその所作に柚は顔を赤らめたまま眉を顰め、困ったように目を泳がせた。
「…ひとつだけあるかも。」
優しく微笑んだまま、やがて哉汰は静かに言った。
「え?」
「あんたに、してほしいこと。」
ほんとに?
驚いたように目を見開き、柚は哉汰をじっと凝視した。