わかれあげまん
妨 げ
「いや~2人とも郊外授業お疲れ様!…まあこれでも飲んで、一服して。」
ニコニコ笑みながら珍しく高戸所長自らが淹れてくれたコーヒーカップを、柚と哉汰は礼を言って受け取った。
柚はスタッフルームの椅子に鎮座し、湯気の立つカップを包み込むように両手で持ち、そっと唇に傾けた。
熱っぽいほろ苦さが、冷えた身体にじんわりと染み渡っていく。
「で、どうだった?星崎ちゃん。藤宮くんの働きっぷりは。」
興味津々と言ったようにそう尋ねてきた所長に、柚は微笑んでまっすぐ答えた。
「いや、も、カンペキでした。ほんと、講師始めたばかりとは思えないくらい。」
「そおかあ!いやー想像以上にできる人なんだねえ、藤宮くん!」
うんうんと相槌をうち賞賛する所長に、そっすか?とどうでも良い様子の哉汰を、柚は小さく笑った。
そしてコーヒーカップに唇を当てたまま、その湯気の向こう、ゆったりと椅子に腰掛け飲む哉汰の姿を、ちらり盗み見た。
リラックスした表情で窓の外を見やりながらゴクリとコーヒーを飲み下した時、喉仏が色っぽく動いた。
あ;ヤバ////。
あたしったらまた見惚れちゃってる…
泳がせた目を慌てて逸らし、柚はゴクゴクと乱暴にコーヒーを流し込んだ。