わかれあげまん
飲み干したカップをコトリとデスクに置き。
だ、だめだ。
もうこれ以上藤宮くんと一緒にいたら、…あたし。
「あ、じゃ、今日はもう遅いのであたしお先に失礼しまーす。」
と柚は慌てたように佇まいを正すとペコリと頭を下げ、扉横に掛かっていた出勤表のバインダーを手に取った。
勤務終了の押印をしていると背後で、
「じゃあ、俺も失礼します。」
と同調する様子の哉汰に柚は思わずエッと困惑顔で振り返る。
「…なにか?」
「…何で今帰るの?」
「何でって。俺ももう終わりだし。…ってか、パーキングに車あるから。遅いし送るよ。」
哉汰にとっては何ら不自然さのかけらもないいつもの調子に他ならないのだが。
「い、い、いいよ。///…今日は。」
不自然さ極まりなくキョドりながら、顰め面で言う柚の顔は真っ赤だった。
「なんで?意味ワカンネ」
哉汰はいつもの調子でバサッとそう返し、クスリと笑うと。
さりげなくしかし大胆に、柚の大き目の荷物をサッと自分の肩に掛け、
「じゃ、所長。これで失礼します。」
と哉汰も柚の横に並び頭を下げた。