わかれあげまん
熱
* * *
小さなパーキングに佇んだまま、しばし茫然と哉汰の車の去った道の向こうを見やり。
そして柚は、小さく溜息をついた。
コツリ、とブーツを慣らして駅の方へと身体を向け踏み出した時。
バタバタと慌しい足音が近づき、パーキングの入口から誰かが慌てた様子で走って来た。
「…所長?」
「・・・あ!星崎ちゃん」
駆け寄った高戸所長はきょろきょろと辺りを見回しながら、
「藤宮くん、もう帰っちゃった?」
と尋ねた。
「あ、はい・・・」
「…っつーか、アレ?星崎ちゃんも一緒に帰ったんじゃなかったの?」
訝しげに首をかしげ、丸い瞳で覗く所長に、柚は苦笑を返して。
「え、ええ、そーだったんですけど何かさっき、藤宮くん実家のお父さんから急に電話で、帰って来いって言われたみたいて、…で。」