わかれあげまん
「そうだったかあ。…参ったなあ。」
所長は眉根を寄せ、白い息を吐きながら自分の掌を広げて見せた。
「これさ。藤宮くんの忘れ物みたいなんだよね。」
小さな白いプラスチックのスティックを見て、柚も、あ、と声を上げた。
「それ、…藤宮くんのUSBメモリ…?」
「そうなんだ。スタッフルームのパソコンの前に置いてあったんだけどさ。…ポートフォリオってラベルが貼ってあるから、学校の制作で使ってる大事なデータかもしれないだろ?」
そっか。
藤宮くんの次のバイトは来週の週末だし…困るかも。
「あ、じゃ、あたしが預かります。…あとで連絡とって、また学校で藤宮くんに渡しますから。」
「そうしてもらえる?…ありがとな。」
ニコリと微笑むと、所長は柚にその小さなプラスチックのスティックを託した。